違約金とは、定期契約のサービスを途中解約した際に発生するペナルティのことです。携帯電話のサービスでも「2年縛り」という言葉を聞いたことがある方もいると思います。それと同じです。光回線に限らず、通信サービスの多くがこの縛りシステムを採用しています。
2022年7月には、電気通信事業法が改正され、光回線の違約金が大幅に減額されました。しかし、違約金が発生しないようにするには、まだ気をつけなければならないことがあります。
光回線の違約金が高くなる理由
工事費の残債
光回線の工事費は、事業者にもよりますが、フレッツ光や光コラボ事業者の場合は20,000円前後、NURO光やauひかりのような独自回線は35,000~40,000円前後が相場です。
光回線の工事費は、2~3年にかけて工事費を24回(または36回)で割った金額を毎月の割引で相殺することで、実質工事費が0円となる仕組みになっています。なので、短期間で解約してしまうと、工事費の残債が万単位で残っているため、違約金が膨れ上がる要因になります。
契約プランの解約金
プラン解約による解約金は、安いところなら3,000円程度で済みますが、高いところだと10,000円以上取られることもあります。また、光回線の契約期間は2年縛りを基本としていますが、これにも2年の契約満了後はいつ解約しても違約金が発生しないタイプと、満了後は2年契約を再更新する自動更新タイプが存在します。
自動更新タイプの場合、23~25カ月目に更新月が設けられてることが多く、違約金なしでコースを解約したい場合は、この期間に解約しておきましょう。
割引キャンペーンの解約金
割引キャンペーンとは、「◯◯スタート割」や「◯◯2年割」のような2年や3年の定期契約を条件に月額料金を割引するようなサービスです。例えば、フレッツ光の「にねん割」(2023年9月30日に新規受付終了)も、定期契約中に解約すると違約金が発生します。
auスマートバリュー対象のプロバイダだと、コミュファ光がそうですね。契約後2年間550円割引されますが、途中解約すると違約金が発生します。
このように、契約プランには直接縛り期間が設定されていなくても、割引キャンペーンの方に違約金が設定されているケースもあるので注意しましょう。
設備撤去費
賃貸住宅で退去時は回線設備の撤去を条件に工事を行った場合、サービス解約時に他と合算で請求がくる可能性があります。撤去工事費は事業者によって異なりますが、大体10,000円以上で設定しているところが多いです。
電気通信事業法の改正で変わったこと
2022年7月から改正された電気通信事業法が施行されました。これにより、違約金が廃止されたと騒がれた時期がありましたが、現行ルールを見直すだけで、違約金自体が廃止されたわけではありません。
改正内容は、消費者の保護を目的としており、把握しておくべきポイントは主に3つです。
【電話勧誘】説明書面を用いた契約説明の義務化
1つは、電話勧誘にてサービスの契約を勧める際は、口頭での説明だけではなく、利用者に提供条件が書かれた説明書面を送り、利用者がその書面を見ている状態で、契約に関する説明を行うことの義務化です。
今まで電話勧誘では、利用者の大半が通信サービスの知識がないことをいいことに、口頭での説明で半強制的に契約を迫る業者が多く問題となっていました。
改正後は、提供条件の説明には、利用者の手元に書面があることが条件となるので、興味ない場合は最初の段階で断っておけば、相手はそれ以上勧誘行為を続けることができません。
つまり、改正後に電話勧誘で光回線を申し込む場合の流れはこうなります。
- 電話勧誘でサービスに関する簡単な説明を受ける
- 興味を示した場合は自宅宛に説明書面を送ってもらう
- 説明書面を見ながら電話で口頭での説明を受ける
- 提供条件に納得できた場合は契約手続きを進める
契約内容の書面にじっくり目を通してから、契約の有無を決めることができるので、電話勧誘から契約する場合は、届いた書面を隅々まで確認してから、業者へ電話をかけ直しましょう。特に、最低利用期間や違約金、工事費あたりは要確認です。
違約金として請求できる金額の制限
従来の光回線では、違約金という名目の高額請求が問題となっていました。サービスによっては、プランの契約解除料だけで30,000円を超える違約金を請求をする業者も少なくありません。
改正後はこの違約金として請求できる金額にも上限が設けられ、契約サービスの月額利用料相当額以上の金額を請求できなくなりました。光回線の月額利用料は、戸建ての場合で5,000円前後、マンションだと4,000円前後が相場なので、違約金も大体これくらいです。
この金額であれば、違約金を気にせずサービスを選べるようになりますね。注意点としては、この改正後のルールが適用されるのは、2022年7月以降の契約ということ。
それ以前に契約したサービスに関しては、改正前のルールが適用されます。解約タイミングによっては、高額な違約金を請求される可能性があるので注意しましょう。
また、改正後でも工事費の残債がある場合は、今まで通り請求されますが、解約時の一括請求は禁止(分割での支払いは必要)になったので、違約金を含めても、改正前のような高額請求が解約月にまとめてくることはなくなりました。
スムーズな解約手続きの義務化
光回線に限った話ではないですが、通信サービスって、契約手続きはすぐにできるのに、解約手続きは手間と時間がかかるんですよね。
解約申請をウェブで完結できる事業者は良いですが、多くの場合はそれができず、電話での解約手続きを必要としています。その電話に関しても、オペレーターにつながるまでに1時間待たされることもざらです。
改正後は、利用者がスムーズな解約手続きを行えるようにすることが義務付けられました。これにより事業者は、ウェブ完結の解約フォームの設置や、不足している場合はオペレーターの増員を実施する必要があります。
電話での手続きが苦手な方は、IT企業による光コラボは、解約手続きもウェブで完結するところが多いのでおすすめです。
違約金=悪という認識を捨てよう
違約金に対してネガティブなイメージを抱いてる方は多いでしょう。でも一度考えてみてください。「そもそもなぜ違約金が必要なのか?」を。
回線事業者は、インフラの設置や維持に高額な投資をしており、これらのコストは、顧客が長期間サービスを利用することで回収されることを前提としています。
契約期間内に解約されると、プロバイダはこれらの初期投資を完全に回収できなくなるため、違約金を設定して一部の損失を補うことも安定したサービスの提供に必要なことです。
また、多くの光回線サービスは、契約期間に応じて月額料金の割引を提供します。有名なやつだと、2020年に楽天ひかりが発表した「月額基本料が最大1年間無料」という割引キャンペーンは大きな話題を呼びました。
すでに終了したキャンペーンですが、このレベルの割引をしてしまうと、投資した金額を回収するだけでも数年はかかります。楽天は少し特殊な例ではありますが、基本的に違約金や縛りが厳しいプロバイダほど、割引やキャッシュバックなどの特典が豪華です。
ページの内容をまとめると
結論として、今回の電気通信事業法の改正は新規契約者にとってはメリットが大きいです。今まではサービスを解約したくても、無駄な違約金を払いたくないからと、解約のタイミングまで待つ必要がありましたが、今後はその必要もありません。
いつどのタイミングで解約したとしても、毎月の支払い額以上の契約解除料は取れないので、解約金が発生してもせいぜい5,000円前後といったところです。これくらいなら、まあ途中解約だし仕方ないなと思える金額だと思います。
注意点は、改正前の契約には適用されないことです。2022年6月以前に契約したサービスは、その契約時の違約金が適用されちゃうので、直接の恩恵はありません。
しかし、今はキャンペーンで解約時の違約金を代わりに負担してくれるプロバイダもあるので、ぶっちゃけ違約金問題にそこまでナーバスになる必要はないと思います。