「戸建てからマンションに引っ越し、同じ光回線を使っているのに、前よりもネットが遅くなった」なんて経験ありませんか？
私も経験済みですが、これは決して気のせいではありません。なぜなら、戸建てとマンションでは電柱から屋内をつなぐ光ファイバーの配線方式が全く異なるからです。
集合住宅は共同利用方式
共同利用方式とは、マンションの敷地内にある光回線の分岐装置から、各住戸までの光ファイバーを共有する配線方式のことです。建物内でまとめて契約者が見込める分、戸建てタイプよりも安く利用できるのが特徴です。
この場合、分岐装置から各住戸までの距離や分岐数によって、光信号の減衰や干渉が発生する可能性があります。また、同じマンション内の他の住戸と光ファイバーを共有するため、混雑時に速度が低下したり、通信障害も発生しやすいです。
一般的に集合住宅で採用されている配線方式は、外部から引き込んだ光ケーブルを建物内のMDF（主配線盤）に収容し、そこから各部屋に配線を分配する仕組みになっています。
MDFというのは、外から引き込んだ電話や通信の回線を収容する集線盤のことです。集合住宅に新しい回線を導入するには、基本的にこのMDFを経由する必要があります。（光ケーブルを直接部屋に引き込むタイプは除く）
配線方式の種類は３つ
マンションの配線方式は、「VDSL方式」「LAN方式」「光配線方式」の大きく3種類に分けられます。配線方式によって料金プランや速度が大きく変わるので注意が必要です。
VDSL方式（遅い）
VDSL方式は、建物内の共用スペース（MDF）までは光ファイバーで、各部屋までは電話回線で接続されています。最大速度は下り100Mbpsですが、実際にはもっと遅くなることが多いです。
1Gbpsや10Gbpsの光ファイバーを導入したとしても、その速度を保てるのはMDFまでで、そこから先は電話回線を通すため、実際に部屋で使える回線は最大100Mbpsまで減速してしまいます。
工事が簡単で既存の電話回線を使えるのがメリットですが、他の住戸の利用や距離や故障などによって速度が低下しやすいのがデメリットです。
LAN方式（普通）
LAN方式は、建物内のMDFまでは光ファイバーで、各部屋まではLANケーブルで接続されています。終端装置が不要で、LANケーブルを壁の差し込み口につなぐだけでインターネットに接続できます。
最大速度は1Gbps以上ですが、他の住戸の利用や距離や劣化などによって速度が低下することがあることです。LAN方式では1本の光ファイバーで引き込まれた回線をすべての住戸でシェアするので、建物内の住戸で同時にインターネットを利用すると、回線が混雑を起こします。
光配線方式（速い）
光配線方式は、光回線の中で最も速度が高く安定している配線方式です。建物内のMDFから各部屋まで全てが光ファイバーで接続されています。
光信号を使うのでノイズや干渉に強く、最大5Gbpsや10Gbpsといった1Gbpsを超える高速通信も可能です。動画や音楽やゲームなどの高品質なコンテンツや多数のデバイスやサービスを快適に利用できます。
また、集合住宅における光配線方式には、外部から直接部屋に引き込む方式を採用している事業者も存在します。代表的なのはauひかりやコミュファ光ですね。
この場合は、戸建てと同じ方式で工事を行うので、共同利用方式のように安い料金で利用することはできません。しかし、MDFを通さないので、通信速度が速く、建物内の回線混雑にも影響されないというメリットもあります。
マンションの配線方式を調べるには
管理会社や大家に問い合わせる
マンションの配線方式を調べる最も確実な方法は、正確な建物のインフラに関する詳細情報を持っているマンションの管理会社やオーナーに直接問い合わせることです。できれば管理会社には問い合わせたくない気持ちも分かりますが、「インターネット回線の配線方式を知りたい。」と聞けばいいだけなので難しいことではありません。
光コンセントがないか確認する
マンションの通信室や自室内の配線を確認します。光コンセントがある場合、そのマンションでは光回線方式が採用されている可能性が高いです。壁にそれっぽい差込口があったら、端子や書いてある文字を確認しましょう。「光」や「光コンセント」といった文字があれば、それは光回線用の光コンセントです。
LAN配線方式から光配線方式に変更は可能？
これは技術的には可能ですが、実現可能性はマンションの現在のインフラや建物の構造に依存します。光ファイバーへのアップグレードには、新しいケーブルの敷設や既存の配線の交換、通信設備の更新など、多くの作業が伴うので、住人の要望だとしても現実的ではないでしょう。
このような変更を行う場合は、専門の技術者による詳細な調査が必要です。コストと時間がかかるだけでなく、マンションの所有者や管理会社の承認も必要になります。
物件の紹介ページに「高速インターネットが無料！」と書いてあったからここに決めたのに話が違う！
この手のトラブルはよくある話なんだ。でもクレームしたところで、どうにかなるわけでもないのが現状だよ。家探しの際は、契約前に建物の配線方式を不動産屋に確認しておくのも大切ってことだね。
回線速度を改善する方法はないの？
IPv6に加入する
個人で光回線を契約している場合、非加入の場合はIPv6オプションに加入することで、回線品質が改善される可能性があります。最近の光回線は、基本的には標準でIPv6に対応済みですが、IPv6が普及する2018年以前に契約したサービスの場合、加入はオプションによる任意になっている場合があるので、一度契約しているプロバイダを確認してみてください。
高性能Wi-Fiルーターを利用する
比較的性能が良いWi-Fiルーターを利用することで、回線品質が改善される場合があります。ルーターは2024年の現在であれば、8,000~12,000円程度のモデルが理想です。
私は過去にLAN配線方式のマンションに住んでいたことがあるのですが、マンション備え付けの無料Wi-Fi（壁埋め込みタイプ）だと実測値で一桁Mbpsという絶望的な遅さだったので、ゲーミングルーターを購入し変更したところ、一瞬で500Mbps～出るようになり、劇的改善したことがあります。
ちなみに当時住んでいたのは名古屋だったので、回線はコミュファ光です。
VDSL方式は厳しい
LAN方式や光配線方式はまだ改善できる望みがありますが、問題はVDSL方式なんですよね。正直言って、VDSL方式の場合、部屋に届く速度が物理的に遅くなっているので、こちらの努力や工夫でどうにかなる問題ではありません。
光回線の事業者そのものを乗り換えたとしても、配線方式がVDSLなら、大幅改善する見込みも薄いです。この場合は、我慢してそのまま使うか、光回線とは異なりますが、ホームルーターをおすすめします。
ホームルーターは、電源コンセントさえあれば、工事不要で利用できる固定回線です。回線は光ファイバーではなく、モバイル回線（4G/5G/WiMAX）ですが、下手なVDSL回線よりも快適に利用できます。
ページの内容をまとめると
マンションで光回線が遅い主な原因は配線方式にある。配線方式とは、マンション内で光回線をどのように分配するかという仕組みのことです。
配線方式によって、インターネットの速度や安定性が大きく変わります。現在、マンションで使われている配線方式は、VDSL方式とLAN方式と光配線方式の3種類があります。
光配線方式は、ルーターを変えたり、未加入ならIPv6に加入などすることで、環境が改善される可能性がありますが、VDSLやLAN方式の場合は、配線方式を変えずに、回線品質を劇的に改善させるのは難しいです。
